R.W. LOVELESS (ボブ・ラブレス)
本名:Robert Waldorf Loveless(ロバート・ウォルドーフ・ラブレス)
1929~2010年、通称、ボブ・ラブレスあるいは R.W.ラブレスと表記されます。
ナイフの歴史を造ったアメリカのナイフメーカー
ラブレス 概略
1953年、船員をしていたラブレスは緊急時にロープをすばやく切るために切れ味に優れたナイフを欲していました。雑誌の情報から「ランドール・ナイフ」をアバクロンビー&フィッチに買いに行きますが、人気のため手に入れることが出来ませんでした。
そこでラブレスは自分でナイフを作ることを決意し、約3週間で最初のナイフを作り上げます。ラブレスのナイフ制作の歴史の始まりです。
最初のナイフは車の板バネを使用し作られました。
アバクロンビー&フィッチから帰る道すがら車の解体屋に寄り、ナイフを作るための鋼材を求めます。
従業員はこれならいいナイフがたくさんできると言って「39年型パッカードのスプリング」を適当なサイズに切断、これがニッケルを含んだ非常に良い鋼材で運が良かったとラブレスが述懐しています。
その後、制作したナイフをアバクロンビー&フィッチに持参すると購買担当者はすぐに2~3本ナイフの制作を依頼。そのナイフが即日完売し、次には1グロス(144本)の制作を依頼されました。
その後、デラウェアで約3000本、カリフォルニアに移ってから5000~6000本に及ぶナイフを製作されたようです。
ラブレスは、カリフォルニア州リバーサイドにある彼の長年の自宅で、2010年9月2日に肺がんのため81歳で亡くなりました。
ラブレスのナイフ業界における業績
ストック&リムーバル
ラブレスは、それまで鍛造(鉄の塊を熱して叩いて形作る製法)が主であったナイフ造りを、ストック&リムーバルと呼ばれる板材を切り抜いてヤスリで整形し制作する簡易な方法を編み出しました。
そして、その製法は現在ではナイフ制作の主流となっています。
ナイフ材の開発、考案、先駆使用
ハンドル材のマイカルタを開発、フルテーパードタング開発、ラブレスの名を冠した「ラブレスボルト」を考案、革を濡らして型をつけシースを作る方法、ウエットフォームを考案しました。
また、154CMやATS-34ステンレス鋼をナイフ業界で先駆けて使用しました。
パワーハンマーによってロゴを打ち込むことはナイフの強度を損なうとしてエッチングによってロゴマークを入れる方法を提唱、実践しました。
ナイフメーカーズ・ギルドの発足
カスタムナイフ業界の親交と技術の向上を目指してナイフメーカーズ・ギルドを発足、日本にも同様にジャパンナイフギルドの結成を提唱し、初代会長に就任しました。
ラブレスと日本
ラブレスは自身の制作方法を開示しており、来るものに親切に教えていたようです。
日本のカスタムナイフメーカーにもラブレスに師事したり、一時教えをいただいた方がいました。
その中でも弟子と呼ばれたカスタムナイフメーカー、相田義人氏とは親交が深く、よく日本を訪れ、日本に訪問する際は、相田氏を頼っていたようです。
他にも、古川四郎氏やクザン小田氏がラブレスに教えを受けました。
ラブレスの2人目の奥さんは日本人で、ラブレスと日本の関係の深さが伺えます。
ラブレスは日本について、鍛造技術は日本が最高、また商売が上手な民族であると評していました。
ラブレスマークの遍歴
ラブレスのマークはWヌードと呼ばれるブレードの表と裏で絵柄の女性も後ろ向きになるというマークが有名です。
山秀にはラブレスのヌードマークの足ふきマットがありますので来店の際はチェックしてみてください。
ラグビーと呼ばれるラグビーボールのようなマークは、多くのカスタムナイフメーカーがラグビーの形に自身の名前を入れてその形を真似をしています。
1968年頃
1970年頃 Wヌード
1974年頃
1980年代頃
ラブレスナイフとデザイン
ラブレスは、ナイフの売れ行きにはデザインの良し悪しが大いに関係しているとし、デザインを非常に重要視していました。
また、ナイフを持ったときの直感的な「いい気持ちがする」といったような感覚が良いナイフかどうかの判断に重要であるとしました。
ラブレスのデザインは人気が高く、カスタムナイフメーカーはこぞってラブレスデザインのレプリカを作りました。
今でも多くのカスタムナイフメーカーがラブレスデザインのナイフを作っています。
当時、ラブレスは、Gerber、Lone Wolf Knives 、 Beretta 、 Schrade Cutleryなどのナイフのデザインを手がけました。
今でもベレッタやバークリバーナイフにはラブレスデザインのナイフが見受けられます。
ビッグベアー
シュートナイフ(chute)
クルックドスキナー
ドロップハンター
ファイター
ガットフックスキナー
セミスキナー
ストレートハンター
ユーティリティ
ワイルダネス
ラブレスは自分の作ったナイフを実用の道具と位置づけていましたが、現在ではコレクターズアイテムとして高額で取引されています。
山秀でもコレクターの方から委託販売として預かることがありますが、高額にもかかわらず、気がつくと売れている…という人気のナイフです。
ナイフコレクターなら1本持っておきたいナイフなのかも知れませんね。